ビートルズの音楽とともに、心にじんわり染み渡る物語。
ショーン・ペンが演じるのは、知的障がいを持つ父親・サム。彼の世界はシンプルで、だからこそ愛がストレートだ。
だが、その“障がい”のために、最愛の娘ルーシー(ダコタ・ファニング)との親権を奪われてしまう。
「父としての愛情は、普通である必要があるのか?」
――そんな問いを突きつける本作は、観る者の心を静かに揺さぶる。
彼を支えるのは、同じように個性を持つ4人の友人たち。実際にそのうちの2人は、知的障がいのある俳優が演じており、リアリティを支えている。
また、監督は脚本を書く前に長期間、知的障がい者施設に通い、彼らの日常や想いに寄り添いながら物語を構築していったという。
ショーン・ペン自身も施設で作業を共にしながら、しぐさ・視線・会話の間まで丁寧に観察し、自身の演技に反映させていった。
サムというキャラクターを演じるため、ペンは言葉のリズム、視線の動き、身ぶりの一つ一つを完璧に制御した。それでいて、感情はにじみ出る。
この映画が愛される理由は、彼の“演技の細やかさ”にある。
そしてその奥には、「誰もが愛する権利を持っている」という静かで強いメッセージが込められているのだ。
◆ アカデミー賞主演男優賞ノミネート
◆ ダコタ・ファニングも最年少で助演賞ノミネート